新出題基準の変更・追加された点の問題と解説⑤:看護国試!WHO(世界保健機関)によるウェルネスの定義とは?

今回は健康と定義の中の「ウェルネスの定義」という項目です。






第99回
健康の説明で適切なのはどれか。
1. 地域や文化の影響を受けない。
2. 時代を超えて普遍的なものである。
3. 健康と疾病との関係は不連続である。
4. 障害を持っていてもその人なりの健康がある。




解説

まず健康とは、病気はない、身体が弱っていないということではなく、肉体的・精神的・社会的にすべてが満たされた状態にあることをいいます。

ウエルネスとは、世界保健機関(WHO)が提示した「健康」の定義をより踏み込んで、広範囲な視点から見た健康観を意味しています。

簡単な言葉でいうと、運動を適宜日常生活に取り入れながら、「栄養・運動・休養のバランスをとって健康的に日々の暮らしを送ろう、健康づくりを行っていこう」という目的で提唱された概念です。身体の健康だけでなく、日常の行動様式と生活態度の質を変え、自分自身に合った最高のライフスタイルを作り上げることを目的とします。

自分の生活習慣を点検して、もっと楽しく、より充実した人生を送るためには何が必要か、と探っていくものです。

これらの観点から、健康は地域・文化・時代・年齢など様々な影響を受けるものであると言えます。時代や地域とともに衣食住は変化するし、疾病構造も変化します。

1. 地域や文化の影響を受けない。×
健康は衣食住・地域・文化・時代・年齢など様々な影響を受けるものでしたね。
それによって疾病構造は変化していきます。平均寿命なんかにも変化がみられ、現代では生活習慣病が増加し、それをもとにした疾病はとても多いですよね。死因原因となる疾患の順位も変わってきています。

戦前は主として肺炎や結核などが多かったのですが、近年は、悪性新生物、心疾患、肺炎、脳血管疾患等の病気が多くなりました。また死亡には至らないけれどもストレス、運動不足、不規則な生活などによって起こる糖尿病や高血圧症などの生活習慣病は、昔の結核にかわる現代の国民病となっています。


2. 時代を超えて普遍的なものである。×
普遍的とは「共通する」ということ。
これも1と同じですね。健康は衣食住・地域・文化・時代・年齢など様々な影響を受けるものでした。
それによって疾病構造は変化していきます。平均寿命なんかにも変化がみられ、現代では生活習慣病が増加し、それをもとにした疾病はとても多いですよね。死因原因となる疾患の順位も変わってきています。

ちなみに、WHO憲章が出されるまでは、主に身体面の健康が重視されていました。終戦直後の1946年に、WHO は健康への関心を一般普及させるために健康定義を制定社会的側面を加えた健康概念が提唱されています。健康の定義づけは第二次世界大戦が契機になったと言えるかもしれません。


3. 健康と疾病との関係は不連続である。×
WHOの理事会で「健康と疾病は別個のものではなく、連続したものである」という発言がされています。

WHOが定めた健康の定義に新たに「spiritual」、「dynamic」を加え、
「完全な肉体的(physical)、精神的(mental)、spiritual及び社会的(social)福祉のdynamicな状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」としてはどうかという提案が過去にありました。「spirituality」はよく「霊的」と訳されて日本語にうまく訳せない言葉ですが、人間の尊厳の確保や生活の質を考えるために本質的な部分の内容を表現するもので、「dynamic」は健康と疾病は別個のものではなくて連続したものであるという意味を表現する言葉です。こうした背景に、健康の確保には生きている意味や生き甲斐などの追求が重要であるという考え方があるとされています。

結局、1999年のWHO総会では,現在の憲章が適切に機能していることから早急に審議する必要性が低いとされ,審議をしないまま事務局長が見直しを続けていくこととされました。今後、新たに「spiritual」、「dynamic」が加わって国試にも出題される日が来るかもしれません。


4. 障害を持っていてもその人なりの健康がある。◎
WHOでは、単に疾病または病弱の存在しないことではないと述べているのでこれが適切です。
健康とは単に病気でない状態を示すものではなく、病気があっても自分自身のライフスタイルを維持しながら自分らしく生きている人もいます。障害の有無と健康かどうかは一致しません。