新出題基準の変更・追加された点の問題と解説⑨:【看護国試の重要新項目】サクセスフル・エイジングの予想問題

サクセスフル・エイジングとは?


今回はサクセスフルエイジングについて。出題基準に新たに追加された項目です。

2016年の日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳で、いずれも過去最高を更新しています。

つまり、現在の日本での一般的な「定年」後も、男性では15年以上、女性では20年以上の人生が残っていることになります。

それだけ残っているのなら、誰もが「残された人生を幸せに暮らしていきたい」と考えますよね!

こうした点に対して、サクセスフル・エイジングとは何か?を考えていくことが求められています。

サクセスフル・エイジングは、「幸せな老後」と訳すことができます。


サクセスフル・エイジングの定義


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サクセスフル・エイジングとは、年齢とともにライフサイクル上の発達課題に適応しながら、自分自身が老いていく現実を受け入れ、社会生活にうまく適応して自分の人生に納得し、豊かな老後を迎えられていることをいいます。

生活していく上で望ましい心身機能や生活機能(自立度)を保持して、日常生活機能や他者との関わりを維持して、社会的な活動(社会貢献)を行うことが老後のQOL(生活の質)の保障に繋がる、というわけです。

健康の定義を思い返すと、看護師は高齢者に対して、疾患とうまく付き合いながら豊かな生活を送れるようにサポートするという観点が非常に大切です。


追加された項目なので過去問がありません。

これまでの看護師国家試験では、高齢者の「エイジズム」の概念について出題されています。なので、同じようにサクセスフル・エイジングの概念を問われても答えられるように準備しておく必要がありますね。

サクセスフル・エイジングに関する過去問がないので、代わりにプロダクティブ・エイジングとエイジズムの過去問を載せておきたいと思います。

問われ方は似たものになると考えられるので確認してみてください。




第27回 介護福祉士国家試験
プロダクティブ・エイジング(productive aging)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1. バルテス(Baltes, P.)が最初に提唱した。
2. 高齢者の経済的自立を目指した概念である。
3. エイジズム(ageism)による高齢者のとらえ方を肯定した概念である。
4. 主観的幸福感とは無関係である。
5. プロダクティブ(productive)な活動には,セルフケア(self-care)が含まれる。




解説

プロダクティブ・エイジングは以下を目標としています。

高齢者を弱者として差別や偏見の対象とするのではなく、すべての人が老いてこそますます社会にとって必要な存在であり続けること」

社会的弱者と差別的にとらえられた高齢者像ではなく、さまざまなプロダクティブな活動(生産的・創造的活動)を行い、その知識や経験で社会貢献する高齢者像を目指す考え方です。具体的なプロダクティブな活動は、労働、ボランティア活動、セルフケア、趣味などが挙げられます。

プロダクティブ・エイジングは生産的高齢者と訳され、高齢者が自分の生き方や方向性を自己選択し、自己実現を図るための自立を促しています。



1. バルテス(Baltes, P.)が最初に提唱した。
プロダクティブ・エイジングは、アメリカの老年学者であるバトラーによって提唱されました。

2. 高齢者の経済的自立を目指した概念である。
高齢者に自立を求め、生産的・創造的な生き方をしていく、という考え方です。特に経済的な自立を目指したものではありません。
高齢者が生産的になることで、さまざまな面で自立することができるという考え方です。

3. エイジズム(ageism)による高齢者のとらえ方を肯定した概念である。
エイジズム、これもバトラーによって使われた言葉です。年齢差別、特に高齢者に対する偏見と差別を意味します。
エイジズムとは正反対の概念です。

4. 主観的幸福感とは無関係である。
プロダクティブ・エイジングを実現するために、高齢者の社会参加活動と主観的幸福感の関係についての必要性が考えられています。

主観的幸福感とは、どのくらい幸せかを本人の主観をもとに測るもので、「自分がどれだけ幸せを感じているか」のことをいいます。
人の生活状況を最も良く判定できるのは生活している人自身であるため、人が自分の幸福感を主観的に測ることが最も大切です。

例えば、日々食べていくだけのお金しかないような状況であっても、本人が「日々食べていけるだけ幸せだ」と感じていれば、それは主観的幸福感が高いといえます。

尺度を測る方法として、これら4つの項目が用いられます。

1.「個」の幸福度
2.人との関わりの幸福度
3.自己評価の幸福度
4.社会との関わりの幸福度

5. プロダクティブ(productive)な活動には,セルフケア(self-care)が含まれる。◎
バトラーは、「高齢者の自立と活力を支え、ひいては社会貢献を促す良好な健康状態が必要である」として「責任あるエイジング」の概念を展開しました。






第100回
Aさん(94歳、男性)は、脳卒中の再発作後、肺炎を発症した。Aさんの家族への説明のうち、エイジズム〈高齢者差別〉にあたるのはどれか。
1. 「年齢から判断すると、体力が落ちていると思います」
2. 「年齢から判断すると、治療への反応は遅いかもしれません」
3. 「年齢から判断すると、肺活量が落ちている可能性があります」
4. 「年齢から判断すると、何もせず経過をみるのがいいでしょう」




解説

エイジズムは、年齢差別のことを指します。
特に高齢者への差別と偏見を意味することが多いです。主に年齢を理由として個人や集団を不利に扱ったり差別したりすることをいいます。


1. 「年齢から判断すると、体力が落ちていると思います」
加齢により体力低下すると肺炎を起こしやすくなります。これは客観的なアセスメントであってエイジズムにはあたりません。

2. 「年齢から判断すると、治療への反応は遅いかもしれません」
こちらも加齢によって薬物代謝が悪くなると、内服薬の副作用は生じやすくなります。
また、生態防御反応も低下するので、薬剤や治療に対する反応はさまざまで、二次的障害も生じやすいです。
これも客観的なアセスメントであってエイジズムには相当しません。

3. 「年齢から判断すると、肺活量が落ちている可能性があります」
同じですね。加齢によって肺活量は低下します。客観的なアセスメントであってエイジズムには相当あたりません。

4. 「年齢から判断すると、何もせず経過をみるのがいいでしょう」◎
高齢者は亡くなっても仕方がない」という差別的な考えがみられますね。
加齢によって身体の機能低下が生じると、高齢者は生体の予備力も減少するので、変化に適応する能力が低下し、回復の遅延につながります。
高齢という理由で治療をしないのはエイジズムにあたります。