新出題基準の変更・追加された点の問題と解説⑬:【看護国試】人獣共通感染症...??昨年の第106回で出題されました。「人獣」と書いて「じんじゅう」と読みます。


第106回
人獣共通感染症で蚊が媒介するのはどれか。
1. Q熱
2. 黄熱
3. 狂犬病
4. オウム病
5. 重症熱性血小板減少症候群SFTS



解説


1. Q熱
Q熱は重要な人獣共通感染症の一つで、1935年オーストラリアの屠畜場の従業員の間で流行した原因不明の熱性疾患として発見されました。のちにリケッチアの一種による感染症であると明らかになっています。Q熱という病名は、不明熱(Query fever)に由来しています。オーストラリアで発見されて依頼、世界中でQ熱の患者が報告されて広く認識されるようになりました。

感染動物(ウシ、ヤギ、ヒツジなど)の尿、便、乳汁などに排泄されて環境を汚染し、ヒトは主にこの汚染された環境の中で粉塵やエアロゾールを吸入することで感染します。(空気感染)

Q熱の症状はインフルエンザ様症状で重症化すると肺炎などをきたします。


2. 黄熱◎
黄熱は黄熱ウイルスによる感染症で、感染症法では4類感染症に分類されます。宿主はヒトとそれ以外の霊長類(サル)です。媒介動物であり、また保有宿主でもある蚊に刺されることにより感染します。ヒトへの感染は、主にネッタイシマカによるものです。現在でもアフリカや南米など地域的流行が発生して、現地への旅行者が罹患することもあります。


3. 狂犬病
狂犬病は熱帯地域や発展途上国における人獣共通感染症のひとつで、年間に約5万人以上が死亡していると推定されています。
狂犬病ウイルスを保有するイヌ、ネコおよびコウモリを含む野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口からの侵入、および気道粘膜感染によって発症する人獣共通感染症です。狂犬病は4 類感染症全数把握疾患に定められていることから、診断した医師は7日以内に保健所に届け出る必要があります。その後、2003年11月施行の感染症法の一部改正によ り、直ちに届け出ることになっています。


4. オウム病
オウム病はオウム病クラミジアによる人獣共通感染症です。
感染様式としては、病鳥の排泄物からの吸入が主体ですが、口移しの給餌や噛まれて感染することもあります。 飼育しているトリから複数の家族が同時に感染し発症する家族内発生も認められます。オウム病の潜伏期間は1〜2週間で、急激な高熱と咳嗽で発症します。

軽症の気道感染から肺炎や髄膜炎までの多様な病態を含み、市中肺炎における頻度はさほど高くはありませんが、中等症までの非定型肺炎と原因菌不明の重症肺炎では、必ず鑑別に入れる必要があります。


5. 重症熱性血小板減少症候群SFTS
SFTSは2011年に中国の研究者らによって発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症です。2013年1月に国内で海外渡航歴のない方がSFTSに罹患していたことが初めて報告され、それ以降他にもSFTS患者が確認されるようになりました。

SFTSウイルス(SFTSV)に感染すると6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを引き起こします。

検査所見上は白血球減少、血小板減少、AST・ALT・LDHの血清逸脱酵素の上昇が多くの症例で認められ、血清フェリチンの上昇や骨髄での血球貪食像も認められることがあります。(致死率は6.3〜30%との報告あり。)

感染経路はマダニ(フタトゲチマダニなど)を介したものが中心ですが、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されている。治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはありません。