【看護師が教える】心不全でおさえておきたい4つの看護上の問題とその観察ポイントとは?

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心不全における看護上の問題とその観察ポイント 

 

 こんにちは!107回の国家試験が終わったみなさんはお疲れ様でした。入職までの

 日々は友達と遊ぶなり、4月からの生活の準備をするなどゆっくりと過ごしてくださ

 いね。学生時代もレポートや実習などがあって忙しかったかと思いますが、1年目も

 同じぐらい忙しくなってしまうので…

 

 108回の国家試験を受ける方々は実習が始まっていますね!これからの期間はこれ

 までにないくらい忙しかったり、思いもかけない出来事があったりで苦労するかと思

 います。この前もとある学生さんが「いよいよ来ちゃったか…」と少しうなだれてい

 ました。

 

 そんなみなさんに少しでもお力になれたらと、実習でよく目にして結構使える「病態

 の看護と観察ポイント」をまとめていきたいと思います!

 

 今回は「心不全」。

 実習の受け持ち患者さんだけではなく、その先の国家試験での出題もとても多い重要

 な症候群です。

 

 心臓の大きな働きは血液を送り出して全身に送り届けることでした。その心臓のポン

 プ機能が低下(心拍出量の減少)して、心不全は身体の組織が必要とするだけの血液

 を送り届けられない状態をいいます。

 

 ちなみに、ここで述べていくことについてはあくまで一般論です。よく教科書レベル 

 で書かれている普通のこと。なので、みなさんが実際の実習で使う場合はそのままの

 形ではなく参考としてください。視点としては、

 

 「この患者さんの現在の症状はなにか、そもそも原因はなにか、そこから生まれる苦

 痛の緩和はどうするか」

 

 など必ず受け持ち患者さんの個別性に照らし合わせてケアを行っていけるように利用

 してくださいね。

 

 それではいきましょう!

 

 

 

 

①心拍出量の減少

 ポンプ機能が低下すると心臓から送り出される血液の量は減少します。これによって

 血液に含まれて届けられる酸素や栄養分も減少して、全身の組織に影響を及ぼしてい

 きます。このため、送り出す量を増やすために心臓の筋肉(心筋)の収縮力を強くす

 るために薬物療法がとられていきます。

 

 

◎観察ポイント◎ 

 ・バイタルサイン(血圧や脈拍数)に変化はあるか

根拠

⇒心拍量が低下すると、全身に送ろうとする血液量を増やすために、送り出す回数(心拍数)を上

げるという代償機能がはたらきます。もし、ポンプ機能の低下が原因で血圧低下が進んでショック

状態に陥ったら、それは心原性ショックといいます。ショックの診断基準は表2を見てくださいね!

 

・チアノーゼの有無 

⇒チアノーゼは酸素がくっついていないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)の量が5g/dl以上になることで生じます。皮膚や粘膜が青紫色になって、特に爪床や口唇周囲にあらわれやすいです。

 

・ショックの徴候(5P)はみられるか

ショック時にみられる共通する症状としては、蒼白(pallor)、虚脱(prostration)、冷汗(perspiration)、

脈拍触知不能(pulseless)、呼吸不全(pulmonary insufficiency)が挙げられます。これらの英語の頭文

字である「p」をとって「ショックの5P(徴候)」といわれています。 

 

   

 ショックは、重要な臓器(肝臓や腎臓など。どれも重要なんですけどね…)の血流が

 維持できなくなることで、細胞の代謝障害や臓器障害が起こって生命の危機に至って 

 しまう状態です。

 

 

 ここの「血流が維持できない」というのは全身を巡る血液の量が維持できないことで

 す。血液の量が維持できない、つまり今回の心不全が当てはまってきます。血液量が

 維持できない=血管内を流れる血液の量が少ない=血圧の低下とつながるでしょう

 か?下の表2のショックの診断基準はぜひメモっておきましょう!

  

 

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 薬物療法では、強心薬であるジギタリス、昇圧作用のあるアドレナリンが主に使用さ 

 れます。ジギタリス血中濃度を保って使用しなければいけません。体内に蓄積され

 やすく、ジギタリス中毒を起こしやすいので観察が必要です。心不全患者さんを受け 

 持つことになったら、「この患者さんはどんな薬が処方されているのかな?」と見て

 みてください。中毒症状としては、悪心・嘔吐・不整脈などがあります。

 

 アドレナリンは交感神経を刺激します。血管のα受容体に作用すれば全身の血管を収

 縮させるし、β受容体の中でもβ1受容体に作用すると、心臓の動きを活発にさせるこ

 とで、心拍数や収縮力を上げます。α受容体での作用は、アナフィラキシーショック

 の際にも効果的です。 心臓の動きが活発になることから、患者さんは自覚症状として

 動悸を訴えることが多いです。

 

 

②呼吸困難からくる不安感や睡眠障害

 

 呼吸困難とは、心臓や肺の疾患においてよくみられる症状の一つです。呼吸をするこ

 とに困難さや不愉快さ、苦痛を自覚することです。心不全によってポンプ機能が低下

 すると、心臓から送り出される血液の量は減少することは①で述べました。

 送り届けられる血液量が減るということは、血液に含まれて届けられる酸素の量も減

 少して、全身の組織は酸素不足の状態になります。私たちが息を止めていると苦しく

 なってくるあの状態が体の中でおきてくるのです。

 

 

◎観察ポイント◎ 

 ・バイタルサイン(呼吸数やSpO2)や呼吸状態に変化はあるか

根拠

⇒呼吸困難は、呼吸をすることに困難さや不愉快さ、苦痛を自覚をすることでした。なので、観察することとし

ては、自覚症状や喀痰・咳嗽の有無、呼吸回数、どんな呼吸をしているかなどの呼吸状態、SpO2などが挙 

げられます。咳嗽は乾性咳嗽と湿性咳嗽に分けられますが、心不全の場合、喀痰の貯留がみられるため、

湿ったような湿性咳嗽がみられます。

これらに加えて、患者さんの呼吸困難感をI~V段階で評価するフレッチャー・ヒュー・ジョーンズ分類などを用

いて数字で重症度を表してアセスメントに厚みを加えるのもいいですね!

 

・チアノーゼの有無 

⇒チアノーゼは酸素がくっついていないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)の量が5g/dl以上になることで生じ

ます。皮膚や粘膜が青紫色になって、特に爪床や口唇周囲にあらわれやすいです。

 

・不安の訴えの有無

⇒呼吸困難があると、生命の危機を感じて不安が生じてきます。そのため、患者さんが抱える不安を傾聴したり、その思いを共感的な態度で接して気持ちを落ち着かせる関わりが必要です。

 

・睡眠時間、熟眠感の有無

⇒呼吸困難や不安感によって十分な睡眠がとれていない患者さんがとても多いです。また、起座位をとっていればそれは余計にです。睡眠時間を把握するのもそうですが、眠りにつくまでにどれぐらいかかったか、満足した睡眠がとれたのか確認が必要です。

 

 

 

 そんな状態にある患者さんに対して私たちが行うケアは、まずは酸素療法。医師

 によって治療方針が立てられる中で、おそらく酸素療法がその内の1つとして採用さ

 れます。心不全の患者さんに限らず、実習に行って酸素療法をしている方を受け持っ

 たら「酸素流量」の確認を必ずしておきましょう。酸素ボンベの見方も教科書等で

 見ておく必要があって、過去の国試でも酸素ボンベの残量や、残りどれくらいの時

 間使用できるかなどの問題が出題されています。この酸素療法を行うことで呼吸状態

 はどうなっているか、医師が指定した酸素流量で必要な酸素化が行われているか

 SpO2の観察を行います。

 

 呼吸困難の状態にある患者さんは、呼吸がしにくいので患者さん自ら呼吸をしやすい

 体位を取っていることがあります。それが起座位です。名前の通りで「体を起こして

 座って」います。この姿勢を取ると、心臓に戻っていく血液量が減少し、肺うっ血の

 改善が見込まれます。また、横隔膜が下がって肺が広がって呼吸面積が広がりやすく

 なり、呼吸困難が軽減します。体動困難な方もいますので、それぞれの患者さんに

 とって安楽な体位が取れるように整える必要があります。

 

 呼吸は生命維持の基本です。上記のような呼吸困難があると、患者さんは生命の危機

 を感じて不安が生じてくる方 がいます。そのため、患者さんが抱える不安を傾聴し

 たり、その思いを共感的な態度で接して気持ちを落ち着かせる関わりが必要です。し

 かし、この傾聴によって患者さんと会話をすることで呼吸困難を悪化させることもあ

 るので、こちら側から話をしすぎないことも、患者さんが話しすぎないように区切る

 ことも必要です。高齢者はお話しするのが大好きだからゴホゴホ言いながら話し続け

 る方もいるんですね。注意です。

 

 普段意識せず行えていた呼吸が苦しいのですから、睡眠もしにくくなる方がいます。

 呼吸困難によって不安が押し寄せてしまい、夜間十分な睡眠がとりにくくなります。

 夜間帯に少しでも睡眠できるように、また睡眠不足の場合は日中に仮眠をとれるよう

 に室内の明るさなど環境整備をするなど、落ち着いた環境で患者さんが生活できるよ

 うにしていく必要があります。ただ、夜間帯の睡眠に支障があってはいけないので、

 注意が必要です。医師からは睡眠薬が処方されることも考えられます。

 

 

血液の流れ

 

 

 私たちの体の中を流れる血液には、呼吸によって取り込んだ酸素や食べ物によって取

 り込んだ栄養分が多く含まれています。この血液が心臓から送り出されて、全身をま

 わるときに、体の細胞へ酸素と栄養分を供給していきます。

 

 まず、左心室を出発としてみていきます。心臓のポンプ機能によって左心室が収縮

 し、大動脈を通って全身に送り出されます。全身をまわって大静脈から右心房に戻

 り、続いて右心房からその下の部屋である右心室へ入ります。そして、右心室の収縮

 によってその血液は肺動脈を通り、肺へと送り出されます。肺で酸素を取り込んだ血

 液は肺静脈から左心房に戻り、左心房から左心室へと送られ、同じように全身に送り

 出されていきます。

 

 これら4つの部屋がリズムよく拍動を繰り返すことで、心臓は効率的に血液を送り出

 すことができるのです。

  

 心不全は病名ではありません。

  実は、心不全は実は病名ではありません。

 「心臓の働きが不十分な結果、起きた体の状態」をいいます。 

 

 心臓には、全身に血液を送り出すポンプのような働きがありました。このポンプ機能

 が落ちると、心臓が送り出す血液の量(心拍出量)が少なくなります。その程度は

 様々ですが、少なくなりすぎると生命に関わってきます。

 

 そして、全身の血液の流れが悪くなります。その状態を「うっ血」といいます。この

 うっ血によってさまざまな症状が現れてきます。

 

急性期と慢性期の違いは?

 

 まずは急性期と慢性期についてです。看護学生さんが見ておられるので、それぞれの

 看護についても。

 

急性期では、患者さんの状態がどんどん変わっていくので気が抜けないのです。

 

 急性期とは、簡単にいうと「病気になりはじめた時期」のことをいいます。今回、大

 杉さんが亡くなられた診断名にも「急性」の文字が入っていました。

 

 病気やけがによる症状が急激に現れて、患者さんの身体的・精神的な負担が大きい時

 期でもあります。急性期は経過が早く、刻一刻と変化していく患者さんの状態をしっ

 かりと把握することが必要です。たった数時間でもがらりと容体が変わっていること

 も多く、現在のことだけではなく「朝はこうだった」、「1時間前にはこうだった」

 といった的確で詳細な状況報告、素早い判断、迅速な対応が求められます。

 

 医師などの他職種との連携をとりながら突然の容体急変のリスクにも備えなくてまな

 りません。患者さんの命と健康を守る急性期は、24時間気の抜けない緊張感のなかに

 も、やりがいは大いにあると考えられます。

 

慢性期では、今後の療養について考えたり、もとの生活に戻るための準備が必要です。

 

 慢性期とは、急性期とは逆で病状は比較的安定している時期です。

 

 再発予防や体力の維持を目指して、長期、患者さんによっては生涯にわたって治療を

 続ける必要があります。患者さんが治療に対して後ろ向きになってしまう場合もある

 ので、その気持ちを受け止めながら社会復帰を後押しすることが大切です。

 

 慢性期は、生活習慣病などで入退院を繰り返す患者さんも多いです。高齢者が比較的

 多いため、治療後の退院が難しかったり、転院先に悩む社会的入院患者が多いのが現

 実です。ただ、経過がゆっくりなため患者さんとの距離が近く、1人1人とじっくり向

 き合って関わるところにやりがいを見出せます。他のステージと比べて急務が少ない

 ので、子育てとの両立もしやすいとも言われています。

 

原因はなにか?

 

 最も多い原因としては、心筋梗塞などの虚血性心疾患です。心臓に栄養を送っている

 冠動脈という血管に血の塊ができて詰まってしまう病気です。

 

  1. 血の塊によって冠動脈がつまって、血液の流れがせき止められてしまう。
  2. すると詰まった先の血管に血が行きわたらなくなる。
  3. そうした時間が続くと、心臓も細胞から成り立っていることから、心臓の細胞は酸素や栄養不足によって死んでしまう。
  4. 心臓の細胞が死ぬということは、血液を送り出すポンプ機能が低下して、全身に血液が行きわたらなくなることを指す。
  5. 心臓だけでなく、全身の細胞が死んでしまう。最終的には死に至る。

 

 心筋梗塞ではすさまじい胸の痛みがあります。ほかにも放散痛といって、背中や顎、

 左腕、胃のあたりが痛むこともあります。中には歯の痛みを訴える患者さんもいま

 す。

 

 大杉さんは「急性心不全」との診断でしたが、心臓の病気はないとのこと。

 多くは何かしらの心臓の病気をもとにして心不全に至ることが多いです。急に心不全

 が発症することもなくはないですが、かなり稀ということからも、亡くなる前のお大

 杉さんのお腹の痛みはこの放散痛による胃の痛みであったかもしれません。

 

どんな症状があるのか?

 

 心臓に戻ってこようとする血液がうっ血すると、この血液がしみ出して肺の中に水分

 が溜まってしまい、激しい呼吸困難と同時に咳と痰が出ます。泡のようなピンク色の

 痰になります。

 

 肺に水分が溜まって酸素の通り道である気管支が圧迫されて酸素が入ってきにくい上

 に、心臓は全身に血液を送りにくい状態なので、チアノーゼ(唇が紫色になるこ

 と)、手足の冷感、全身に冷や汗をかきます。脈が速くなり、動悸を訴えることもあ

 ります。このような状態が急速に出現し、悪化していくことが急性心不全の特徴で

 す。

  

治療内容

 症状などを診察した主治医の判断で様々ですが、呼吸困難があるため酸素吸入を始め

 たり、体内に水分が溜まるから利尿薬(尿の量を増やす薬)、気管支が圧迫されるか

 ら血管拡張薬、心臓のポンプ機能が低下することから強心薬などが投与されます。

 

 呼吸の状態が非常に悪い場合は、気管内挿管をして人工呼吸を行います。利尿薬に

 よって体の外へ水分が抜けていくと呼吸は楽になっていきます。同時に、心不全の原

 因となる心筋梗塞不整脈などに対する治療を行っていきます。

 

看護

 

 私が看護師として心不全患者さんにお伝えすることとしては、

  1. 仰臥位(あおむけで横になる姿勢)で悪化するので、呼吸困難は半座位(上半身を起こした姿勢)、起座位(座った姿勢)で楽になります。
  2. 悪化させる要因として、風邪などの感染症、過度の活動、塩分や水分の制限を守らないことなどがあるので注意していただきます。

 

 これらは症状が落ち着いた患者さん向けですかね。 

 一度心不全になると残念ですが、完全に回復することは不可能です。患者さんの多く

 が入退院を繰り返していきます。

 

 悪化と改善を繰り返すたびに重症化していき、そのたびに心臓の機能が低下していき

 ます。そのため、生涯にわたって管理が必要になり、その方に合った生活や療養行動

 をしていく必要があります。

 

 進行性で機能は低下していくことから、同じ管理を続けてしているだけでは心不全を 

 コントロールしていけません。そのため、生活や療養行動も変化していく必要があり

 ます。

 

 ご本人はもちろん、そのご家族にも病気についての理解を深めてもらい、内服薬の管

 理、塩分摂取,血圧や体重のモニタリングなど患者さんやご家族自らが管理していく

 能力を高めていってもらいます。前述した病期に合わせ変化させることも課題となり

 ます。そして、管理にばかり目を向けるのではなく、病気になる前の生活の質をでき

 るだけ保ち、その人らしく生活していっていただけること大切です。