新出題基準の変更・追加された点の問題と解説⑪:【看護国試の重要新項目】災害現場でも看護師の知識が生かされる!挫滅症候群(クラッシュ・シンドローム)とは?

第98回
35歳の男性。震度6強の地震発生36時間後、がれきの下から救出され、病院に搬入された。長時間両大腿部が圧迫されていたため、下肢に知覚・運動障害を認めたが、意識は清明で呼吸と循環動態とは安定していた。入院後、両下肢が著しく腫脹し、赤褐色尿を認め、全身状態が急速に悪化した。血液検査で血清クレアチンキナーゼ(CK)値と血清カリウム値とが急激に上昇した。最も考えられるのはどれか。

1. PTSD
2. 深部静脈血栓症
3. ネフローゼ症候群
4. 挫滅症候群(クラッシュ症候群)



解説



1. PTSD
PTSD心的外傷後ストレス障害)のことで、災害や事故、犯罪被害、虐待など人が体験する範囲を超える衝撃的な体験によって、数週から数か月たってから発症します。精神的不安により、突然怖い体験を思い出したり、不安や緊張、めまいや頭痛、不眠などの過覚醒症状があります。


2. 深部静脈血栓症
深部静脈血栓症はオペ後や長期臥床中などに静脈内に血栓が形成されて、その血栓が血流によって肺動脈にたどり着いて詰まることで肺塞栓が引き起こされることをいいます。


3. ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群は糸球体の障害で以下が診断基準となります。

成人:①、②の所見が必須条件
①高度の蛋白尿(3.5g/日以上)が持続
②低アルブミン血症(3.0g/㎗以下)
③浮腫
④脂質異常

小児:約8割が微小変化型
①高度の蛋白尿
②低アルブミン血症(3.0g/㎗以下)


4. 挫滅症候群(クラッシュ症候群)◎

長時間大腿部が圧迫された後に全身状態が悪化とあるのが大きなヒントです。

長時間何か重いものなどに圧迫されると血流障害(血液の流れが悪くなること)が起きます。その圧迫がなくなって血流がよくなると、重いものなどの圧迫で壊れた筋細胞からカリウムが流れ出して全身をまわります。

細胞内と細胞外を比べると、細胞内のカリウム値の方が高かったですよね。あれが血液中に流れ出してきてしまうのです。カリウムの正常値が3.5~5.0で、細胞外は4程度、細胞外は150と細胞外の約40倍も多いです。

そのカリウムが血中に流れてくるわけですから、カリウム血症となって致死性不整脈心室細動を引き起こします。

また、骨格筋の破壊によって筋肉から漏れ出したミオグロビンによって高ミオグロビン血症となり、ミオグロビンが持つ腎毒性が急性腎不全を引き起こします。

筋細胞が多く壊れると、カリウム以外にもCK(クレアチンキナーゼ)が上昇するのが特徴的です。